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アートロック

Art Rock
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ディスコグラフィ 名盤 おすすめ 代表作 最高傑作 名曲

1960年代後半のニューヨークでは、ドラッグカルチャーを介した前衛的な芸術サロンが賑わいを見せ、西海岸におけるヒッピーのコミュニティはもちろん、それはパリやロンドンの社交界とも結ばれた。ロックミュージシャンたちは、そこで様々な芸術家、文学者、映画人、音楽家などと交流した。マリアンヌ・フェイスフル、アニタ・パレンバーグ、イーディ・セジウィック、ニコ、アマンダ・リアといった女性たちもサロンに華を添えた。ビートルズローリングストーンズのメンバーは、アンディ・ウォーホルやジョン・ダンバーを介して、オノ・ヨーコやマリオ・スキファーノに出会った。ローカルチャーとハイカルチャーの垣根が取り払われる中で、「アート(芸術)」としてのロック作品が生み出されていった。


【アートロック/ニューロック】
1950年代から60年代前半までは《踊るための音楽》であった米英のロックンロールが、60年代後半になって《聴くための音楽》に変化した。また、《シングル中心》に制作されていたロックンロールが、コンセプチュアルな作品として《アルバム中心》に制作されるようになった。こうしてロックそのものが一種の「アート作品」となった。その意味で、アートロックは「ニューロック」とほぼ同義であり、また「AOR」(Album-Oriented Rock)とも同義である。代表的なものは、後期ビートルズのアルバム作品や、キングクリムゾン、ピンクフロイドなどのプログレッシヴロック作品であり、その潮流はおもに英国で展開したように見える。
しかし、米国にアートロックのシーンがなかったわけではない。米国の状況を見ると、それらがドラッグカルチャーを介して、文字どおり「アート」(文学、美術、服飾、映画、クラシック、ジャズ、フォーク、現代音楽などの諸芸術)との交流から生まれていたことが分かる。代表的なものは、ロックとフリージャズと現代音楽とを越境したフランク・ザッパのアヴァンギャルド作品や、アンディ・ウォーホルのファクトリーから生まれたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの作品などである。こうした「アート」との交流が、米英を問わずロックの進化を加速させた。



'65
ラバー・ソウル/ビートルズ
Rubber Soul/The Beatles

ビートルズは、もともとライヴ活動を中心に活動してきた生粋のビートバンドだったが、この作品を境にしてスタジオバンドへと転換した。ボブ・ディランを介して米国のドラッグカルチャーに接近していた時期でもある。結果的に、彼らは66年8月の公演を最後にライブ活動を停止した。下記のとおり、本作に影響を受けたブライアン・ウィルソンは、従来のサーフィン&ホットロッドのイメージを覆すような『Pet Sounds』を生み出すことになる。



'66
ペット・サウンズ/ザ・ビーチ・ボーイズ
Pet Sounds/The Beach Boys

ビートルズの『Rubber Soul』からの影響を受けたブライアン・ウィルソンの実質的なソロ作品。バンドとしてのライヴ活動から遠ざかることで生み出された内省的な世界は、従来のサーフィン&ホットロッドのイメージを覆す内容であり、当時はほとんど理解されなかった。しかし、この作品は、翌年のビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に影響を与え返す。



'66
フリーク・アウト !/ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション
Freak Out !/The Mothers of Invention

フランク・ザッパは、もともとシチリア島のラテン/ゲルマン/ギリシア/アラブ的混血性を内在させており、その地中海性アシッドフォークの混沌をもって、米国のブルース、ジャズ、ロックの解体・再構築に挑んだ。それは現代音楽家のエドガー・ヴァレーズが、アジア・アフリカ的な音響とリズムによって西洋音楽の前提を打ち破った手法にも通じている。本作では、黒人プロデューサーのトム・ウィルソンが、フォークとロックとフリージャズの綜合を請け負った。



'67
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ
Velvet Underground & Nico

アンディー・ウォーホルが美術表現の拡張を、ルー・リードが詩の即興的衝動への回帰を、そしてジョン・ケイルが現代音楽家としての破壊的創造を、それぞれに企てた問題作。敗戦後のドイツに生まれ育ったニコは、少女時代にヨーロッパの映画業界とファッション業界をくぐりぬけたあと、その退廃美を一身に背負っていた。ここでもプロデューサーのトム・ウィルソンが、フォークとロックと現代音楽の要素を一つにまとめあげている。



【サイケアート&シンフォニックロック】
ブルースロックに出自をもつバンドも、スタジオアルバムの制作に没頭しはじめ、オーケストラサウンドを導入するなどして楽曲は長尺化した。また、サイケデリックな表現に傾斜すると視覚的な要素も強まり、統一的なコンセプトを実現すべく作品性が追求されるようになった。それは、とりわけプログレッシヴロックにおいて極まり、数十分に及ぶシンフォニックな楽曲と、巨大な構成をもったアルバム作品が数多く生まれた。



'67
青い影/プロコル・ハルム
A Whiter Shade Of Pale/Procol Harum

米国のザ・バンドを先例にしたとされるWキーボードの編成を組み、ゲイリー・ブルッカーのピアノを軸とするリズム&ブルースのサウンドに、マシュー・フィッシャーのオルガンがバロック音楽のような荘重さを加えている。歌詞には謎めいた暗喩が多用され、その陰鬱な世界観は英国のプログレッシヴロックの先駆となった。



'67
キープ・ミー・ハンギング・オン/ヴァニラ・ファッジ
You Keep Me Hanging On/Vanilla Fudge

ラスカルズを先例にしたとされる編成で、重厚なリズム&ブルースのサウンドやゴスペルのようなコーラスワークを軸としながら、そこにマーク・スタインのオルガンがサイケデリックな色彩を加えている。シュープリームスカーティス・メイフィールドビートルズなどの楽曲がカヴァーされ、それらが長尺のサイケロックに姿を変えている。その大胆な音楽性は、米国におけるハードロックの嚆矢といえる。



'67
カラフル・クリーム/クリーム
Disraeli Gears/Cream

もともとはブルースロックを出自とする有名ミュージシャンたちのバンドだが、まもなくサイケデリックな色彩を前面に押し出し、ライヴではジャズのような遠大なインプロヴィゼーションを展開するようになった。このようなスタイルこそが、英国におけるハードロックの基礎なった。



'69
ディープ・パープル III/ディープ・パープル
Deep Purple/Deep Purple

リッチー・ブラックモアのギターを中心とする重厚なロックサウンドに、ジョン・ロードのオルガンがクラシック音楽の要素を加え、さながら米国のヴァニラ・ファッジと双璧をなすような荘厳なハードロックの様式を完成させている。本作は、かつて『素晴らしきアート・ロックの世界』という邦題で発売された。



'69
クリムゾン・キングの宮殿/キング・クリムゾン
In The Court Of The Crimson King/King Crimson

多くのアシッドフォークバンドがそうだったように、キング・クリムゾンもまた東方志向を核としながら、それをメタリックな歪んだ音響によって表現した。とりわけ中心メンバーのロバート・フリップが、幼いころにクラシックギターを学び、スペインの旋律の向こうにアラブの歴史性を感じ取り、さらにはグルジェフやバルトークをとおして東地中海の思想体系や音楽語法を学んだことの意味は大きく、そのことはピート・シンフィールドの詞世界にも反映されている。



'70
原子心母/ピンク・フロイド
Atom Heart Mother/Pink Floyd

もともとはアンダーグラウンドなシーンでサイケデリックな感覚と即興性を表現の核としたグループだったが、中心メンバーのシド・バレットが脱退後は、楽曲の構成力を高めて映画のサウンドトラック制作などに取り組み、そうした蓄積に裏打ちされた本作では、前衛音楽家のロン・ギーシンを迎えて、オーケストラのサウンドを取り入れた長大かつ幻想的なシンフォニックロックを完成させている。



'72
サムシング/エニシング? /トッド・ラングレン
Something/Anything? /Todd Rundgren

フィラデルフィア近郊に生まれたトッド・ラングレンは、一方ではポール・バターフィールドのブルースロックやブロードウェイのミュージカルを愛好し、他方ではブリティッシュインヴェイジョンとギルバート&サリバンの大衆オペレッタ文化に引き寄せられ、ニューヨークとロンドンという2つの都市文化を併せ呑んでいった。本作は、後期ビートルズサイケ路線を受け継ぎながら、ウェストコースト風味をも加えたアートロックになっている。
ブルースロック/ハードロックはこちら
プログレッシヴロックはこちら


【グラマラスロック/シアトリカルロック】
サイケデリックロックなどに備わっていた退廃美は、英国風の陰鬱なダンディズムや絢爛なゲイカルチャーに融け合い、アシッドフォークの東洋的・魔術的・原始/即物的な世界観は、SF的な近未来イメージへと接続されてレトロフューチャリズムに変質した。とりわけデヴィッド・ボウイが、いったん音楽から離れ、チベット仏教やリンゼイ・ケンプの舞台芸術やキューブリックのSF映画に学んだことの意味は大きい。視覚的・演劇的な要素を強めたグラムロックの分野では、暗黒的な演劇性を追求したコンセプトアルバムがいくつも制作され、フィルム・ノワールとの類比から「ロック・ノワール」「グラム・ノワール」などとも呼ばれた。



'70
世界を売った男/デヴィッド・ボウイ
The Man Who Sold the World/David Bowie

デヴィッド・ボウイは、少年時代にロックンロールやモダンジャズに魅了され、デビュー当初はブルースロックやフォークロックに取り組んだ。リンゼイ・ケンプにパントマイムを学び、舞踏家としてティラノザウルス・レックスの前座を演じたのち、SFアシッドフォークともいうべき「Space Oddity」でレトロフューチャリズムを開示。さらにはトニー・ヴィスコンティやミック・ロンソンらをしたがえ、ゲイファッションとエレクトリックサウンドを融合させたグラマラスロックの世界を切り開いた。



'71
エイティーン/アリス・クーパー
Love It to Death/Alice Cooper

アリス・クーパーは、はじめロサンゼルスを拠点に活動し、フランク・ザッパに見出されると、グラマラスで毒々しい舞台演出とともに奇形的なサイケロックを展開した。しかし、いったん地元のデトロイトに戻ると、MC5のハードロックのサウンド、イギー・ポップのステージング、ジョージ・クリントンの劇場性などに影響を受けつつ、カナダ人プロデューサーのボブ・エズリンを迎えて作曲や編曲を抜本的に改革。粗削りなハードロックと劇的なオーケストレーションを融合させることで、ついにその様式を確立した。



'73
フォー・ユア・プレジャー/ロキシー・ミュージック
For Your Pleasure/Roxy Music

キング・クリムゾンのメンバー選考に落選したブライアン・フェリーが、美術学校時代のバンドを組み直し、ブライアン・イーノらを加えてメジャーデビュー。ハリウッド映画の黄金時代を象徴する「Roxy」の追憶とともに、暗黒的かつ甘美なレトロフューチャリズムを打ち出して人気を博した。『For Your Pleasure』のジャケットには、サルバドール・ダリやデヴィッド・ボウイの愛人として知られ、当時はフェリーの恋人でもあった男装の麗人アマンダ・リアの姿が映っている。



'73
ベルリン/ルー・リード
Berlin/Lou Reed

バラッド(物語歌)の手法をロックオペラの世界にもちこみ、あたかもサウンドトラックのように仕立てあげた悲劇的ロックノワールの傑作。物語の舞台であるベルリンは、前年のライザ・ミネリ主演の映画「キャバレー」に描かれた戦前のドイツのようでもあり、あるいは少女時代のニコが実体験として過ごした戦後ドイツのようでもある。欧州のグラムロックの文脈に位置づけられる作品ではあるが、そのサウンドデザインはカナダ人プロデューサーのボブ・エズリンに負っている。



'73
戦慄の王女/クイーン
Queen/Queen

フレディ・マーキュリーは、タンザニアのザンジバル島に生まれ、インドで育った。12才でバンドを結成し、クリフ・リチャードやリトル・リチャードなどを好んで演奏した。ボリウッドのミュージカル映画に影響を受けたともいわれる。17才で英国に移ると、美大でグラフィックデザインを学び、ブライアン・メイやロジャー・テイラーらのバンドに加入してクイーンを結成。ヴォーカルとエレクトリックギターのオーバーダビングによるシンフォニックなサウンドで劇場的なロック世界をつくりあげた。



'74
眩惑のブロードウェイ/ジェネシス
The Lamb Lies Down on Broadway/Genesis

ジェネシスは、当初はアシッドフォークバンドだったが、やがて演劇性を強めたプログレッシヴロックバンドへと移行。ピーター・ガブリエル在籍期を締めくくる『眩惑のブロードウェイ』では、ニューヨークを舞台にプエルトリコ人少年の精神的な彷徨が描かれ、そこでは「ウエストサイド物語」(米国)の舞台設定と、ジョン・バニヤンによる「天路歴程」(英国)の主題とが、ホドロフスキーによる「エル・トポ」(メキシコ)のごとき奇怪なイマジネーションによってグロテスクに結合されている。



'75
キャプテン・ファンタスティック/エルトン・ジョン
Captain Fantastic & the Brown Dirt Cowboy/Elton John

75年に『トミー』が映画化されてエルトン・ジョンが出演(当初はデヴィッド・ボウイも出演予定だった)。同年にはリチャード・オブライエンの『ロッキーホラーショー』も映画化されるなど、暗黒的な狂気とゲイカルチャーを組み合わせるグラムロックの嗜好性と演劇性は、広く一般社会にも共有されていた。
グラムロックはこちら(※内容は重複します)
ニューウェイヴはこちら(※内容は重複します)


関連項目
ビートルズ
ビーチボーイズ
アシッドフォーク/サイケデリックロック
ブルースロック/ハードロック
プログレッシヴロック
グラムロック
ニューウェイヴ

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